2014年頃からクライアントの働き方への取り組みと、世の中の働き方に対する違和感の接点を見つけてブランディングしようという試みがあって、その集大成になったよね。

2018 58th ACC TOKYO CREATIVE AWARDS
フィルム部門Bカテゴリー (Online Film) 総務大臣賞/グランプリ
BOVA 2018 広告主部門 準グランプリ
CODE AWARD 2018 グッド・オンラインフィルム

プロジェクトが始まったきっかけは?
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カンノ -
ユキモト 当時はブランドジャーナリズム、今でいうナラティブ(物語的)な考え方が重要視されていて。社会とブランドの中でメッセージを打ち出していく流れが始まってきたくらいの時で、クライアントがどうあるべきかを追及していたタイミングだったと思います。
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ヤマザキ 「世の中に何か言ってやろう」という動きが流行っていましたね。風刺と言いますか。
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オカザキ 働き方改革・プレミアムフライデーとかが始まりだして…
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カンノ ただその取り組みへの疑問があった。例えば一律で定時に帰らないといけない日があるとかね。
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オカザキ 画一的な働き方改革では働いている身としては納得できない、というところから話は出発しましたね。
なぜ評価されたと思いますか?
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カンノ 世の中で話題になったのは新聞広告だけど、賞を取ったのはムービーなんだよね。
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ユキモト 再生回数みたいな数字に出るところ以外で評価されたというのが大きいと思います。
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カンノ 賛否両論があったみたいだけど、クラフト力が評価されたんじゃないかな。
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オカザキ 内容の重さと、トンマナ(雰囲気)のギャップがよかったのでは?
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カンノ テーマが重いからこそ気軽に見られるようにしたからね。
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ヤマザキ 嫌味のない風刺ができた、ということですね。
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ユキモト 結果的にある意味、パンクな作品になったと思う。

パンクというのはどういうことでしょうか?
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カンノ ずっと引きの絵でキャラクターがチラチラ動いてて。カットチェンジもない。
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ユキモト テンポをあげたり、寄りと引きで動きをつけて見やすくすることがムービーのセオリー。それにめちゃくちゃ反しているんです。そういう意味でもパンク、カウンターだったのかなと。
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ヤマザキ あれをよくクライアントも通してくださったなと思います。
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オカザキ スマホじゃ全然見えないですしね笑
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ヤマザキ 元々のテーマからすると、余計な演出はいらなかったってことですね。リアルな会話劇になったと思います。

広告賞をとって仕事はどう変わりましたか?
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ユキモト 賞取る前と取った後でやることは変わってないし、僕らも変わってない。周りの見る目は変わったかな。
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カンノ 周りの反応はね。でも、自分達がすごいんじゃなくて、クライアントがすごいんです、というのは定期的に話をしてましたね。自分たちを連れていけばどこでもあれができる訳ではないと。クライアントの姿勢と覚悟があるからできたことだと思うよ。
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オカザキ 小手先の技術でなく、本質を追求した結果、他とは違う形で認めてもらえて。そういう方法あるんだ、続けていいんだ、と思えたことは、そのあとの仕事でも活かされています。
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ヤマザキ 前例のないことにもチャレンジしやすくなりましたね。
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ユキモト 今も問題は山積みで変えていかなくちゃいけないことは多い。 だから世の中に提案し続ける必要があるんです。
コロナを経て昨今の企業の取り組みは変わったように感じますが…
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カンノ コロナの前も後も大きくは変わってない気はするね。例えば企業の都合でテレワークを推進し、会社として必要なくなれば社員の意向に関係なく取り上げる。社員個人の幸せと企業が求めるものの溝はまだ残ってる。
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ユキモト 働き方が変わっていったけど、それが個人の幸せや楽しさに繋がっているかというと、万人にとってそうではないですよね。結局は話し続けるしかない、答えは永久に出ないかもしれないけど。
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カンノ そうだね。ただ社員の声に耳を傾けたり、企業と個人のバランスを考える余地は確かに生まれてきたと思うよ。
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ユキモト 働き方改革の当初は生産性のことしか考えていなかったけど、今は少し変わり始めています。大袈裟に言えば、『アリキリ』のようなサイボウズさんと取り組んできた施策が変化のきっかけになっているのかもしれません。
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カンノ やっている自分たちとしては、小さな小石くらいかもしれないけど、一石を投じられたなという感覚はありますね。